ヒヤリハットは、顕在化していないものの、重大な災害や事故に直結しかねない無症事故状態、一歩手前の危険な状態です。
重大事故を防ぐためにはヒヤリハットの段階で事故の原因を発見し、事故原因を除去することが重要です。
重大事故を効果的に防げるようになるためには、介護の現場で発生するおそれが大きい事故に対する危険感受性を高めること、つまりヒヤリハットを敏感に察知できるようになることが不可欠です。
そこで、比較的発生のおそれが大きい事故の種類と、ヒヤリハット事例について説明します。
⇒無料LINE登録でPCショートカット集288選がもらえる!【ユースフルの公式LINE】
発生のおそれが大きい事故の種類
公益財団法人 介護労働安定センター「「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書」(平成30年3月)によると、消費者庁より厚生労働省老健局に報告された介護施設内での276 事例の重大事故の内訳は、
- 転倒・転落・滑落 181 件 65.6%
- 誤嚥・誤飲・むせこみ 36 件 13%
- ドアに体を挟まれた 2 件 0.7%
- 盗食・異食 1 件 0.4%
- 施設と利用者の送迎中の交通事故(接触・追突) 7 件 2.5%
- その他 16 件 5.8%
- 不明 33 件 12%
(なお、重大事故は概ね30 日以上の入院を伴う事例を対象とし、介護事故発生日の対象期間は平成26年8月15日から平成29年2月27日までとなっています。)
「転倒・転落・滑落」及び「誤嚥・誤飲・むせこみ」で全体の約80%を占めており、これらについては最優先で検討する必要があります。
もちろん、他の事故について軽視していいわけではありませんし、事故防止に努めなければならないものです。
しかし、より発生のおそれが大きいものを優先することで、効果的に事故の発生を減らすことができるのも事実です。
また、転倒・転落・滑落の181件の事故発生時の業務は、
- 見守り中 46.7%
- 他の利用者を介助中 7.2%
- 目を離した隙 3.9%
となっていて、約58%を占めています。
生活の場における利用者の行動によるものが多くを占め、介助者が直接介助して発生する事故は少ないことになります。
つまり、介護者の観察が手薄になったときに、利用者の歩行時にバランスを崩す、ベッドから転落する等によって重大事故が発生しているのです。
発生のおそれが大きい事故とヒヤリハット事例
以上から、着目したいヒヤリハット事例を挙げると次のようなものが参考になるでしょう。
歩行中の転倒
段差を越えようとしてバランスを崩し、転倒しそうになる
http://www.techno-aids.or.jp/hiyari/detail.php?id=253&p=0
段差を越える際に四点杖の脚が1箇所しか段差を越えておらず、傾きが生じて転倒しそうになった
ベッドから転落
背膝連動の機能を使用して端座位をとろうとしたとき、バランスを崩し転倒しそうになる
http://www.techno-aids.or.jp/hiyari/detail.php?id=42&p=0
背膝連動の機能を使用したため、身体が「くの字」の状態になり動きにくく、端座位をとろうと勢いをつけていたら、転倒しそうになった
介護職員にはヒヤリハット察知能力が不可欠
発生のおそれが大きいものに重点を置いてヒヤリハットを敏感に察知できるようになることで、効果的な事故防止につなげることができます。
もちろん、すべての重大事故を防止するようにしていかなければなりません。
しかし、介護の現場ではいろいろな状況で業務を行うので、経験豊富な介護職員であってもすべての事故を予測することは不可能です。
したがって、重大事故につながるおそれのある危険は確実に察知するとともに、状況に柔軟に対応できる能力を身に付ける必要があります。
そのため、介護職員はヒヤリハット事例を活用して、重大事故の危険を察知する能力を日々磨く必要があるのです。