危険予知トレーニング(KYT)の目的は、一人ひとりが様々な状態・状況の中に潜んでいる危険要因を察知し、その防止対策をたてられるようになることです。
過去に誰かが見つけた個々の事例ごとの危険要因やその対策を覚えることではありません。
確かに、危険要因やその対策を知ることは重要です。
予備知識もない素人が何人集まっても、意味のある話し合いはできないでしょう。
何かをするためには最低限必要な知識があり、それを教えておくことは欠かせません。
しかし、過去の危険要因やその対策を知っているだけでは、現場にある未知の事故を防ぐことはできません。
過去の知識を活かし、未知の問題を解決していく能力こそが重要なのです。
そして、その能力を鍛えていくのが危険予知トレーニング(KYT)です。
危険予知トレーニング(KYT)の目的・意義
危険予知トレーニング(KYT)では、
「~なので・・・が起きる」
「○○が~して・・・になる」
というように、未知の顕在化していない危険を察知し、その危険がどのように事故につながるかを説明できる能力、すなわち危険予知能力を鍛えることができます。
危険予知能力を鍛えるためには、様々な状態・状況に潜む危険を予測する練習、すなわち危険予知トレーニング(KYT)を反復することが効果的です。
講義形式等で教えられるのは、既知の危険要因とその対策であり、未知の危険要因とそれが引き起こす事故を予測する方法を教えることはできません。
現場で必要なのは、既知の危険のカタログを暗誦することではなく、未知の危険を察知して事故になる前にその対策を立てることです。
危険予知トレーニング(KYT)では、KYTシートに描かれた状態・状況に潜在している危険を予測する練習を繰り返します。
KYTシートがある限り反復して練習できますから、危険予知能力を効果的に向上させることができます。
危険予知トレーニング(KYT)は 基礎訓練
KYTシートという簡略化された場面での練習ですから、現実の問題発見・問題解決には役立たないと思えるかもしれません。
しかし、複雑な現実の中から問題を発見できるのは、すでに十分な危険予知能力が身についているある種の特殊能力です。
したがって誰もが十分な危険予知能力を身につけているわけではありません。
未だ十分な危険予知能力を身につけていない者に、効果的に危険予知能力を身につけさせるための手法が危険予知トレーニング(KYT)なのです。
危険予知の基礎訓練といってもいいでしょう。
そう考えれば、簡略化されていることが逆に利点になります。
複雑な諸事象に惑わされることなく本質的な危険のあり所に意識を集中させることができるからです。
そうして鍛えられた危険予知能力を現場で活かすのが次のステップになるでしょう。
また、危険予知トレーニング(KYT)は未知の、思いもよらない危険を予知する想像力を育てるのにも効果を発揮します。
グループ活動ですから、参加したメンバーがそれぞれの視点から考え、話し合って危険要因の発見を進めます。
すると一人だけでは考え付かないようなアイディアが出てくることがあります。
場合によっては、KYTシート作成時には考えていなかったような危険要因を発見することもあります。